トニー・レビン著
「Beyond the Bass Clef: The Life and Art of Bass Playing」より抜粋
(translated by Motohiro Fukaya, technical term advised by Shinji-hige-Fukuda)

じめにベースありき。 そはフェンダーなりし。 きっとプレシジョンだったと思うけど、 でもジャズベースかも知れないわけで、まあいいじゃない、そんなこと。 とにかく、それは太古のもので・・・当然pre-C.B.S期の物であった。

そして神はそれを高みより見下ろされ、それを良き物であると思われた。 実際、それは真に良き物であると思われ、それ以上の改良は能わなかった。 (後世、それを試みる者らが現れたが。) ゆえに神はベースをそのままお残しになり、それを演奏するために人を創造された。

して、見よ!人はベースを目にした。 それは美しい「レッド・サンバースト」で、人はそれがメッチャ気に入った。 彼は4弦の解放音を弾いた。 するとその音色は大地一面に鳴り響き、天空一杯に響きわたった。 (このようにしてリバーブが生まれ出た) そしてそれは良きものであった。 そして神はその良き知らせを耳にされ、御自身の手細工に向かって微笑まれた。

その後、時の流れと共に、人はベースを指で叩いて弾くようになった。 すると、見よ、それはファンキーだった。

そして神はこのファンキーさを耳にされ、仰られた。 「イエーイ、いけ!いけ!」 そしてそれは良きものであった。

さて、更に時が過ぎた。 他にすることもなかったので、人はベースの練習をするようになった。 そして、見よ!人はその身に素晴らしいテクを沢山蓄えた。 そして人は速く、より速く演奏するようになり、 その音は疾風のように天界を震わせた。

そして神はこの音を耳にされたが、 それは神が前もって創造された「風」の様な音色だった。 さらにそれは、 神が未だ創造されていなかった「家具」を引きずるような音で、 神はそれを喜ばれなかった。 それゆえ神は人にこう仰った。 「おーい、それはナシで頼むわ。」

は神の声を聞いたが、自らの新しい能力に心を奪われ、 ファンキーなメロディーを疾風のようにはじき続けた。 すると天界は音に揺り動かされ、天使は混乱して走り回った。 (何人かは踊りだしたんだけど、ま、それはちょっとおいておいて・・・)

そして神はそれを耳にされた。 (無視できるわけないじゃない?) そして、見よ!神はムカツカれた。 そして神は人にこう仰せられた。 「だからさあ、ジミ・ヘンが聞きたいんだったら、 最初っからギター作ってたっちゅーの。 ちゃんとベースのパートを弾いてりゃいいんだよ!」

さて、人は神の声を聞き、逆らわない方がいいと知った。 しかし、人は速く、高い音を弾く情熱を知ってしまった。 人は神の創りたもうたベースからフレットを取り去った。 そしてフレットレスのネックの上で指をスライドさせ、 ネックの根本の高音部でメロディーを弾いてしまった。 そして、興奮のあまり主の戒めを忘れ、 高音のメロディーを目も眩む速さで、嵐のように弾きまくった。 すると天界はその攻撃をうけて揺れ動き、 大地は揺さぶられて転がり回った。

こで神は激しく怒られ、雷鳴の如き御声で人に仰られた。 それはこうである。「オーケー、おにいちゃん、も〜う分かった。 我が言いつけを守らぬとな。 見よ!我はソプラノ・サックスを創り、 汝の思いもかけぬ高音が演奏できるようにするであろう。」

「さらに我は混沌の中よりドラムを生み出し、 ドラムは無数の音を叩き出して汝のこうべを痛めつけ、 汝は永遠にドラムの横に立たねばならぬであろう。」

「自分にはでかい音が出せると? 我は{マーシャルのギターアンプ三段積み}を創造し汝の耳を出血させるであろう。 さらに我はこの世にその他諸々の楽器を遣わし、 それらは全てベースより高音部で、 速いメロディーを弾くことであろう。」

「そして人の世の終わりが来るまで、汝は次の如く呪われるであろう。 ベーシスト以外の全てのミュージシャンは ベーシストに低音部しか求めない。 もし汝が高い音や速いフレーズを弾くなら、 彼らは驚いたフリはするが、実際はそれを歓迎しないであろう。 そして彼らは汝に『ぼちぼちソロで行ったらどう?』と告げ、 自分のバンドに別のベーシストを捜すことであろう。 そして、人の世の終わりが来るまで、 もし汝がイカしたフレーズを弾きたいなら、 盗人の如く、夜陰に紛れて人知れずそれを忍び込ませねばならぬであろう。」

「そして、遂にソロのパートを弾く機会を得ても、 他のメンバーはその間ステージを降りて、 近くのバーで一杯やりに行くことであろう。」

神はこう仰られた。 すると全てがその通り成就された。

この文章の著作権はトニー・レビン氏にあります。
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