Levin Brothers new CD & LP

Levin Brothersのアルバムがリリースされました。
この作品は、トニーさんと、キーボード奏者で兄のピートさんと両者の長年の音楽生活の中から、いわば自然に生まれた作品だといえます。
このCDのライナーノーツは、数多くの音楽家のインタビューを行っているAnil Prasadさん(アニルさんのwebsiteは、Innervirews, music without borders(http://www.innerviews.org)が書いています。
このライナーノーツを是非日本の皆さんにも読んで頂きたく、当クラブの翻訳監督、深谷さんが訳して下さいました。いつもありがとうございます。
また、この内容の掲載についてトニーさん、アニルさんも喜んで承諾して下さいました。
それでは、この二人の豊かな音楽生活に、どうぞご一緒しましょう。
(Oct. 2, 2014)



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 今、貴方が手にしているのは単なるアルバムではない。それは二人の兄弟が長い人生を通して育んで来た愛情と、共に分かち合った情熱の結晶なのだ。ピートとトニーのレヴィン兄弟は、ボストン郊外で育ち、50年代・60年代クール・ジャズの大ファンであった。共にクラシック音楽の教育を受けてはいたが、ベーシスト兼チェリストのOscar Pettifordと、フレンチホルン奏者Julius Watkinsの50年代の作品は、レヴィン兄弟が世界的音楽家として飛び回り、その名を馳せるようになった今日まで、彼らに影響を与え続けてきた。Pettifordの名をタイトルにし、Watkinsをフィーチャーしたベツレヘムレーベル1954年の10インチ盤に入っていた「Cable Car」や「Trictrotism」はディープなグルーブと簡潔なソロ、そして魅力的なメロディで二人に大きなインパクトを与えたのである。

初めフレンチホルン奏者としてスタートし、その後キーボードへと転向したピートは、現在までに、少し挙げるだけでも、Miles Davis、Gil Evans、Jimmy Giuffre、Jaco Pastorius、Wayne Shorter、そしてLenny Whiteといった面々との、数えきれない程の録音と公演に名を残してきた。一方のトニーは、ベースとチャップマン・スティックの奏者としてPeter Gabriel(のバンド)やKing Crimsonの一員である他にも、Dire Straits、John Lennon、Pink Floyd、Lou Reed、Tom Waitsなど、無数のロックやポップスの作品に参加している。ジャズの方面でもトニーにはChiris Botti、Gary Burton、Chuck Mangione、Herbie Mann、Buddy Rich、Steps Ahead等々との共演によって名声を得ている。

二人は50年間のキャリアを通じて何度か共演している。Paul Simonの70年代後期のバンドには一緒に参加し、その後もお互いの作品に出演し合っているが、これまで二人で主導するアルバムというものは存在しなかった。しかし現在、ウッドストックにある二人の自宅が15分しか離れていないこと、そしてトニーがNS エレクトリック・チェロを入手したことが、このレビン兄弟のプロジェクトに拍車を掛けたのである。

「長年NSアップライトベースを弾いてきたので、自然とNSチェロも入手し、Peter Gabrielの作品で使いました。」とトニーは語る。「それ以来(ベースとチェロの)両方の楽器でジャズソロを弾いたり、それら向けの曲を書くようになりましたが、次第にこれらの作品を、ピートとの共演作として、二人が聴いて育ったPettifordの音楽に繋がるような使い方が出来ないか、と思うようになったんです。」

そこでトニーはピートに連絡を取り、すぐに創造に火が灯いたのである。

「トニーから電話が掛かるようになり、彼の所へ来て、作品を聴いてくれと言うんですよ。」とピートが話す。彼は本作ではNord社のオルガンを多用している。「どの曲も短くてメロディアスで、長いソロ部分は無し。こういう方向こそが、僕らの感情にも音楽性にも訴えてくる物が大きいんだと二人共気が付き、じゃあ録音して作品に仕上げようと決まったんです。僕らが聴いて育った50年代の音楽を思い起こさせるような、どちらかと言えば個々の演奏よりも、曲自体に重点を置いた音楽なんです。」

二人は約二年かけて曲を作り貯め、そしてこの分野の音楽に熟練の名プレーヤーであるギタリストのDavid Spinozza、サキソフォニストErik Lawrence、そしてドラマーのJeff SiegelやSteve Gaddらを呼び集めた。彼らの共同作業はシンプルで家族的なものだった。

「兄弟だから、特別分かり合える部分があるんです」とトニーは言う。「何時間続けて作業をしても、お互いが嫌になるってことはないし、遠慮なく正直な意見を言い合っても、別に相手が傷つかないかと心配する必要もない。これが作曲の上では好都合でした。」

「ジャズのメロディーパートは、キーボードが受け持つという伝統がありますが、このアルバムはトニーが前方正面に位置するという、貴重な機会でもありました。」とピートが語る。「PettifordとWatkinsがやったように、二人交代でメロディーを受け持ちつつ、とても集中した、簡潔な演奏が出来て、凄く満足です。勿論そうは言っても、50年代には無かったようなエレクトリックな楽器も使っているので、全くのレトロ作品ではありません。僕らが探ってみた当時のサウンドを超えた、現代風のハーモニーやリズムも聴けると思います。」

本作には、内容・アプローチともに、広範囲かつ深みを兼ね備えた、印象的な曲が並んでいる。冒頭、沸き立つような「Bassics」にはトニーのベースによるメロディとソロがフィーチャーされ、Steve Gaddのブラシがそれを支えている。「言ってみれば、楽しい童謡風インストなんで、ほんじゃまあベースがリードで良いんじゃない、って気楽な感じです。」とはトニーの言。

「Brothers」は癖になりそうなビバップ作品で、何十年も一緒に仕事をしてきた兄弟だけに可能な、独特の関係を描き出している。

「ギター・チェロ・オルガンという三声の編成で、幾つかの素敵な間奏が、50年代ジャズサウンドをまじまじと思い起こさせる曲」とピートは言う。

二人がラテン風味のジャズを聴かせるのが「Havana」だ。「ベースの動きはSlam Stewart風で、自分でベースを弾きながら、一オクターブ上でヴォカリーズしてます。」とトニー。「それからJeff Siegelのドラムも良くて、スネアの側面を叩いて、タンゴとマンボの中間的なノリで演ってるのが聴けます。」

「I Got Your Bach」は、バッハのチェロ組曲第一番の1楽章を、独自の視点で捉えたもの。「この曲は終始、素晴らしいベースラインが流れていて、その上で僕がオルガンソロを演っています。」とピートは言う。「僕ら二人の子供の頃の、クラシックのルーツが元になりつつ、後に目覚めたジャズの世界に引き戻されるようなブリッジ部分も持ってます。」

特筆すべきは、King Crimsonの最もメロディアスな曲である「Matte Kudasai」の、優雅かつゴージャスな演奏だ。「チェロに主要メロディを受け持たせた、温かみあるバージョン」とトニー。「色んなフィーリングや感情を辿って行きつつ、中間部には実に美しいピートのソロも入っています。」

結論としてピートとトニーは、このアルバムで彼らの最初期に影響を与えた音楽を、世界の人に楽しんで貰いたい、との思いと共に、この作品が持つ独自の、モダンな響きを聞き分けて欲しいという願いも籠めているのだろう。

「僕は子供の頃にPettifordとWatkinsによって想像力を掻き立てられ、そして彼らの作品は年月を越えてまだ僕の頭のなかに残っています。」とトニーは語る。「だから、このアルバムを聴いた誰かの頭の中にも、たとえその半分の年月でも残っていて欲しい、半分の影響でも与えられたら、というのが僕の夢ですね。」

また彼らは、リスナーが再生ボタンを押すときには、ジャンルにこだわることなく、ただ純粋に音楽として聴いて欲しいとも願っている。

ピートは言う。「ジャズを聞くべきだとは思うけど、よく理解できないんだ、と言う人がいます。そんな人には、理解なんてしなくて良い。聴いてみて良い感じなら、それで良いんだよってね。」

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Levin Brothersの新作のサンプルビデオはこちら
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そして、CDとレコード盤の両方でのリリースになります。 レコード盤は限定千枚、全てサイン入り、ナンバリングされています。 それぞれの購入ページはこちらから、是非どうぞ!
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